「一日一つお題きめったー」という診断メーカーで出たお題で
なんとなく、書くネタに困ったので、SSを書こうかなと思います。
(SSと呼べるのかは謎)
お題「三時間の遅刻だ 」
姉貴が来ない……。――約束の時間をとっくのとうに過ぎているのにも関わらず、僕の目の前に現れない。あいも変わらず時間にルーズな姉貴だ事、と安心する反面、どれだけ説教し、咲夢(サクラ)を付けているにも関わらず、ズレているなぁと思う。
「やぁやぁ、セナ君、ご機嫌が悪そうだね」
「開口一番がそれか姉貴」
「いやぁ、ちょっと道が混んでてねぇ……」
「そ、そうですセナ姉……今回ばかりは道が本当に混んでて……」
「それでも、三時間の遅刻だよ? そりゃ機嫌も悪くなるさ」
色々と言いたいこともあるけれどどうせ言ったところで聞かないから……。
仕方ないと諦めているけれども、それにしたって謝罪の一言位あってもいいと思うんだ。この思考は僕にとってズレていないと信じているし、唯と晶に悪い。
「今日の予定覚えてるよな? いつものお得意さんに姉貴達を紹介する為に時間を割いてもらってるんだがな」
「分かっているとも、早速行こうじゃないか」
「緩やかに歩き出すんじゃないよ。咲夢、車取って来て」
――軽やかに僕の車の鍵を咲夢に投げ渡す。
「っと、了解セナ姉。持ってくるね」
「……おや? 珍しいね。セナが愛車を運転させるなんて、天変地異の前触れかな?」
「茶化すな姉貴、人に車を運転させるのは正直嫌いだけどね。咲夢なら心配いらない」
姉貴に運転させるのは怖いけれど、会社所有のサーキットで走り回って遊んでる時がある咲夢になら車を渡せれる。そんな気がして僕は咲夢になら車を渡せる。
――僕の家兼、本社登記地にしている元曽祖父の巨大ガレージから滑るように僕の深紅に輝く愛車が出てきた。
「おまたせ、相変わらずメンテしっかりしてるなぁセナ姉の車は……」
「当たり前だろ? ウチの営業車全部僕がメンテしたりメンテ依頼出したりしてるんだから」
「うげぇ……戀姉、セナ姉にそんな事させてるのか……」
「ぼ、僕が悪いわけじゃない……セナがやり始めたんだ」
「それに関しては、当時のメンテやってたやつに聞いてみなよ。僕がやらざる得なかった理由があるんだよそこには」
「セナ姉がやらざる得なかった理由……? メンテ担当がサボってたとか?」
「……咲夢、横領ってわかるか?」
「メンテ担当、横領してたの? 決済降りないとメンテ出せないあの部署で?」
「営業車数十台、全バラしして、パーツ売り飛ばしてたんだよ」
「はぁ!? ってか戀姉よく気付かなかったね」
「その頃はちょうどセナのLCBの二人見てたからね」
「……それは嘘だよ姉貴。姉貴が一番最初に気づいたろ?」
あのころ、何故か整備場に行くと『出張中』担ってるはずの車のナンバーが転がってる事が多発した。
「しばらく泳がせていた。と言っても信じられないよね。セナと咲夢、社員達には本当に嘘つきと罵られようとも甘んじて受けるつもりだよ」
「ある日突然呼び出されて、『今日からメンテ担当してくれ』なんていきなり言われるんだから驚いたよ」
「いつも通りのセナ姉嵌めるパターンでメンテ担当やらせてるんだ……」
「まぁいつも嵌められてるけど、嫌じゃない事だけやってくるから尚の事面倒なんだよ姉貴の場合」
「楽しそうにメンテしてるよねセナ姉って」
「僕がメンテ担当のリーダーになってからは決済してからじゃないと動かなかったメンテが、僕だけの判断で降りるからすごい楽になったからね。メンテ部署の子達もいい子ばっかだし、僕のこと尊重してくれるしな」
僕が役員名簿に一応名を連ねてる理由として決済自己判断可能って一面がある。
僕の言葉は姉貴の言葉、思考と思えとメンテ部署の子達は分かってるから、他部署にちょっかい掛けに行かないし、メンテ部署内はいつも仲良いし、良いこと尽くしだ。
多少判断にこまることは咲夢経由で姉貴に聞いてるし、メンテ部署の運用で今後詰まることはないだろう。
「さぁ良いかい? そろそろ本当にヤバいから行くよ」